オバマ閣僚に初の日系人
オバマは7日、次期政権の退役軍人長官にエリック・シンセキ氏(66歳)を指名した。オバマ閣僚では初のアジア系だ。シンセキ氏の閣僚入りは、もしかしたらもしかするかもってな感じで以前から噂は飛び交っていたものの、まったく本命視されてる様子がなかったので、私も驚きとともに嬉しいニュースとして受け止めた。
なぜかというとこのエリック・シンセキ氏。果たして彼の日本での知名度がどれくらいのものなのか私にはまったくわからないんだけど、アメリカでは、イラク増派をめぐって世論が揺れ動いていた頃に、あの超タカ派のラムズフェルドに真っ向から対立し、自分の主張を一歩も譲らず、終いには軍服を脱いで筋を通した、という逸話を持つ英雄的存在の人なのだ。
ハワイ州カウアイ島生まれのシンセキ氏は、広島出身の日系3世。1965年に米陸軍士官学校を卒業した後にベトナム戦争に2度従軍。まじめさが買われて兵士から制服キャリア組へと転身を遂げ、陸軍の主要ポストを歴任した後に米欧州軍司令官に就任し、99年には、日系アメリカ人として初めて陸軍参謀総長の座へと上りつめたという叩き上げの人物だ。
そのシンセキ氏は2003年、アメリカのイラク侵攻を目前に、米議会では米軍の派兵規模をめぐってさまざまな議論が沸点に達そうとしていたとき、彼は参謀総長として「アメリカがイラク侵攻後に統制権を確保しようとするなら数十万人規模の兵力が必要だ」と強く主張。
「そんなの論外。15万人もいれば十分だ」といって譲らない当時のラムズフェルド国防長官に対し、制服組、そして現地を預かる人間としての立場から米国防総省の戦略の甘さを指摘し、ラムズフェルドと真っ向から対立。同じ制服組からは支持されたものの、当時は向かうところ敵なしといわれていたラムズフェルド国防長官の怒りを買い、2003年6月に制服を脱いでしまった。
だけどイラク戦争泥沼化で、兵力増強に面してしまったブッシュ政権は2007年に大規模な兵力増強を決定。やっとそこでシンセキ氏の当時の主張の正しさが証明されたことになったわけだ。
オバマは今回、シンセキ氏を起用した理由を、「彼が主張したイラク兵力増強論が正しかったことはすでに証明されている。帰還兵への医療ケアはアメリカの重要な課題。彼こそ(イラクから)米軍の帰還を名誉あるものにし、退役軍人省の改革ができる人物だ」と説明。シンセキ氏は、「アメリカ中がリセッションで生活苦にあえいでいる時勢で、イラクやアフガニスタンなどの戦地で重傷を負った帰還兵への医療ケアなどの責務をまっとうしないといけない」と淡々とした口調で静かに強い決意を語っていた。
もともと寡黙な人物、と評されることが多い人だけに、淡々とした口調ながらも、きっと心の内では複雑な思いが交差しているに違いない、と聞きながら思ってしまったんだよなー。
だってアメリカ中が「イラクをぶっ潰せー!」とまっしぐらに突き進もうとしていた頃、ラムズフェルド以下ほとんどの人たちが「イラクなんてちょろいもんさ」ってな具合で軽く考えてたから、早い段階から泥沼化を予想し、国防長官とまったく正反対の主張をしていたあの頃のシンセキ氏は「ラムズフェルド長官の天敵」と揶揄されるほど、アメリカのメディアからかなり叩かれてまくってしまった。
どんなに叩かれても主張を曲げない、間違ってると思うことに対して迎合できないから自分はそんな軍のトップなんて努められないと信念を曲げなかったシンセキ氏。相当につらい思いをしたことは想像に難くないんだけど、やっぱりオバマがちゃんと見る目を持っていたってことなんだろーな、きっと。
「二度と着る気はない」と語っていた軍服を再び着ることになったシンセキ氏がこのポストを引き受けたのは、やはり、すさまじい状況にある兵士たちを何とかして救わなければ、という責任感からなのではないかと思う。
今、アメリカではイラクやアフガニスタンから帰ってきた兵士たちが巻き起こす凶悪犯罪が非常に多い。そんでもって、戦地からアメリカに帰還してからもPTSD(心的外傷後ストレス障害)などを煩ってしまってるため、一般社会に適応できない状態にある兵士というものがものすごく多いんだよね。その数34万人、そしてアメリカにいるホームレスの4人に1人が元兵士、といえばきっとわかりやすいだろう。とにかく、アメリカは兵士不足だから、1人の兵士を戦地へ平均して3度ほどおくりこんでる状態なんだけど、まだまだ戦争は終わらないから、戦争の爪あとというのも過去最大規模のものとなっている。
2009年度の退役軍人の医療費はなんと約3兆8000億円。これは2001年のブッシュ政権発足時の約2倍に相当するものだから、戦争がどれだけアメリカの経済を圧迫しているものかわかるだろう。医療費はこんなに膨れ上がっているものの、実際には治療を受けられない兵士もごまんといる状態なので、シンセキ氏に課せられる責務というのは未来のアメリカを考えると非常に大きなものといえる。
なんか、日系でハワイ出身のシンセキ氏の新閣僚入り決定がパールハーバー攻撃の日に発表になったことにも不思議なものを感じてしまうのだけど、シンセキ氏にはこれから負傷兵たちをどんどん救っていってほしいと思う。そして戦争がいらない世の中作りというものに貢献していってほしいもんだ、と切に願わざるをえないのであります。
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